Make: Tokyo Meeting 03 に行ってきたのだ トースト

2008/11 に開催された Make: Tokyo Meeting 02 (MTM02) から半年、MTM03 が 2009/05/23, 24 に開催されたので行ってきたのだ。今回は初の2日間開催、会場も広くなり、出品作品の幅も広がり、かなりパワーアップしておりました。

今回の会場は、デジタルハリウッドという専門学校の体育館と、校舎の 2, 3F の教室や廊下。かつては小学校だったらしく、廊下の流しが妙に低かったり、「ろう下は右側を歩きましょう」的な中央線があったり、校庭に遊具があったり、校門脇にはツツジが咲いてたり、やけに懐かしい雰囲気なのだ。

会場入り口 1日めの体育館全景
小学校ムード全開の会場入り口と、1日めの体育館全景。賑わってます。右奥が入り口、左奥にはヒゲキタさんのプラネタリウムのドームが見える。左手前のバスケットゴール下あたりでは、プレゼンやってます。出品者にはリピータも多く、前回の MTM02 で見たテスラコイルや手作りパルスジェットエンジンやパラメトリックスピーカも健在。しかし驚くのは、たった半年の間に多くの作品が甚だしくパワーアップしていること。これはすごいペースだと思う。さらに今回は、テクノ手芸など Craft: 系の大躍進が目立ちました。

てなわけで、MTM03 で見てきたあれこれをご紹介。今回は勝手に分類してみた。

動かして楽しむモノ

最初は、乗り物などの「移動してなんぼ」なモノなど、完成後に稼働させるのが楽しい系のもの。真っ先に見たのは、第1回のときに八木さんが「スチームパンク!」と評していたイヌのようなもの。ガチョンガチョンと歩きます。どうみてもただの無骨な機械だけど、やや動物っぽい AIBO よりもかわいく見えるのはなぜか。スロットルを微妙に調整しないと振り落とされるという、危険な二足歩行機械もいました。こっちは全くかわいくない。(^^;;

スチームパンクなイヌ 危険な二足歩行機械

より乗り物っぽい物として、プロパンガス原動機付自転車。ちゃんと仮ナンバーを取ってるのに感心した(そこ?)。試乗した人が「ふつーにバイク!」って言ってたけど、それを聞いた作者は嬉しかったのか悲しかったのか、微妙なところだ。同じく自転車系で、スペースバイシクルってのも。こっちはリアル移動はないけど、漕げば漕ぐほどヘッドマウントディスプレイの(周りの野次馬にはパソコン画面の)視点が上昇して、ヴァーチャルに宇宙に行けます。もう一つの自転車系はセグウェイ風自転車。以外と安定は良いらしいけど、故障のために試乗できず。ただし力技で捻るしか手が無い方向転換が弱点だそうで。

プロパンガス原動機付自転車 スペースバイシクル セグウェイ風自転車

移動はしないけど、手作りパルスジェットエンジンやテスラコイルも、稼働させて楽しいモノですね。パルスジェットエンジンの写真は派手に炎があがってますが、これは点火作業の途中で、点火に成功すると炎は見えません。でも写真は派手な方を採用。(^^;; テスラコイルは体育館の緞帳の裏の暗がり(ステージともいう)でデモを続けていて、怪しげな放電音がブビバビと響き渡ってました。放電音で音階も奏でてたので、楽器系に分類される日も近い(のか?)。

手作りパルスジェットエンジン テスラコイル

そしてこの分野のイチオシは、一円玉飛ばし機であります。コンデンサに繋いだコイルの上に1円玉を置き、誘導電流で跳ね上げます。あまりに飛びすぎるので糸で繋いであったけど、重い木綿糸をものともせず、軽く 2m は跳ね上がります。2枚目の写真で机の上の赤いのがお椀で、黒い緞帳をバックに延びる白いのが木綿糸。これでもまだ上昇の途中です。左手の法則って、すげー!

一円玉飛ばし機 飛ぶ一円玉

作る過程を楽しむモノ

出来上がりを使って云々よりも、作る過程が楽しいんだろうな。…と思われたモノをまとめてみました。もっとも、会場内のそこかしこで開催されてたワークショップ(みんなで○○を作ってみよう、的なやつ)は当然この分野だし、そもそも Maker: な人たちは作る過程を楽しんでるんだとは思いますが。それでもなお、動かして「おぉー」というよりは、そこに存在することで「おぉー」というモノたちです。極めて主観的なカテゴリですね。あぁ、言い訳が長い。(^^;; 

ユニットから手作りスピーカは、前回も出展されてました。今回はメイキングビデオ付き。こんな単純な作りでそれなりの音響特性を叩き出すのはすごい。コーンなんか、ただの円錐なのに! もう一つのスピーカ作品は、既製品ユニットをスターバックスの紙カップに嵌め込んだ密閉型スピーカ。スタバ店内の BGM を流すのに採用して欲しいぞ。

手作りスピーカユニット スタバカップスピーカ

ニコニコ技術部の部屋は相変わらず盛況。ネギ振りやあの楽器など、多彩な作品が。ドーナツ・コーヒーの無料配布も健在。教室に入りきれなかったらしく、廊下にもはみ出ていた。このレポートのタイトルに使ったトーストも、ニコニコ技術部ブースにあった作品です。 野尻さんのカルマン渦ネギ振りにはチューニング欲をかき立てられたんだけど、今見たら写真撮ってなかった。あれー?(^^;;

ニコニコ技術部軍団 廊下にも

そして台頭著しいのが Craft: 系。バッグやフェルト細工やぬいぐるみが、どうして LED で光る必要があるのか。…そこに LED があるからですかねぇ。その傍らでは毛糸を紡ぐ人がいたり、編み物してる人がいたり、とてもほんわかとした部屋でありました。 一方、Make: Japan ブースには縫って作った LED マトリクスも。どうして裁縫で作らなければいけないのか。(もぉえぇ)

無駄に光るテクノ手芸 Craft: 部屋 縫った LED マトリクス

何よりも作る過程が楽しそうなのは、というか、作ってみて中毒性が高かったのは、マッチ棒ロケットです。マッチ棒とアルミ箔があれば、ロケットが数分で出来上がります。そして原理的に精度が非常に低い製法なので、己のスキルを磨くべくとても意地になります。これは危険だ!
2枚目は、ローンチサイト(濡れぞうきんとも言う)で発射の時を待つマッチ棒ロケットの勇姿。

マッチ棒ロケット ランチサイト

鑑賞するモノ

実演系のあれこれです。ヒゲキタさんのプラネタリウムもこのジャンルだけど、暗闇での撮影はつらいし、撮っても伝わらないと思うので、写真はなし。またストロボの代わりに LED を使ったゾートロープや、宙に浮かぶ水滴をいじくり回せる(ように見える)時の泉も、写真じゃ面白くも何ともないので撮影せず。この辺は、是非とも自分の目と耳で体験してください。

ライブをやるわけではないけど常にパフォーマンスしている謎の巨大コアラは、スーパーニットクリエイターの力石咲さん。極太の毛糸で、いろんなものを編みたおしてます。そして人面ドッグたちは、触ったりつついたりすると反応して動きます。合奏ライブもやってたらしいけど、素朴に不気味だ。(^^;;

巨大コアラ 人面ドッグ

期待を遥かに超えて格好良かったのは Open Reel Ensemble。USB I/F 付きのオープンリールデッキを駆使して、その場でサンプリングした音を素材に様々なサウンドを作り出します。リールがそこにあるから、スクラッチも出来るんですね。なるほどー。作者は、当初はメロトロンの自作を目指したんだそうです。でも、何も鍵盤の数だけテープがなくても良いじゃんと。ごもっとも!

Open Reel Ensemble Open Reel Ensemble

そして大人気だったのが透明標本。タンパク質分解酵素で透明にした後に、硬骨を紫で染色、軟骨を青で染色したんだそうで。いやー、とにかくひたすら美しい! 生き物すごい!! アンコウの方は、腹の中に食べた魚が入ってます。

透明標本 透明アンコウ 透明標本

音を出すモノ

楽器といえば「あの楽器」で、ニコニコ技術部ブースのあちこちに各種「あの楽器」がありました。「あの楽器」はシンセサイザのコントローラっぽく見えますが、ずばりコントローラなのがもう一つ。アルトリコーダ(に見えるけどウインドコントローラ)。まだプロトタイプだそうなので、次回に期待だ。

あの楽器 アルトリコーダ

楽器というよりリズムボックスなのが BeatBearing。楽譜やプログラミングの代わりに、鉄球を置いて on/off の制御をします。分かりやすい。そしてさらに楽器っぽくないけど Jamming Gear。それぞれのモジュールに仕込まれた一連の音の時間軸が歯車の一周に対応してて、この歯車を駆動輪で回す。歯数を変えるとそれぞれの音のタイミングがずれて新たなリズムを刻む、というもの。

BeatBearing Jamming Gear

そして楽器分野の一押しは「からりおん」。カラリオ(プリンタ)のヘッド駆動用と紙送り用のステッピングモータを音源にした楽器なのだ。しかも MIDI 対応。2台使って4声でアイネクライネナハトムジークを演奏してました。今回の展示の中で、最もくだらない作品に勝手に認定!
今、改めて見て思ったけど、どうしてインクカートリッジがセットしてあるのだ?(^^;;

からりおん

遊ぶモノ

何のためかと言われたら「伊達や酔狂です」としか言いようがなさそうなのを集めました。バカバカしさでは Daily Portal Z の皆さんがダントツ。2日間ひたすら残念なくす玉をぶら下げ続けていたべつやくさんが、一番残念だったと思います。その他にも、体育館の中の景色を StreetView 化するヒモと三日月、もこもこの解体マグロなど、楽しい作品がいろいろ。

残念なべつやくさん StreetView 解体マグロ

石川さんが佇む DPZ ブース全景と、最後は林さんとべつやくさんの漫才を動画でお楽しみください(嘘)。

DPZ ブース全景 YouTube

ところでこれらのネタは、ほとんど見た覚えがあって「あー、あれね! はいはい!」と思いながら見てたのだ。でも MTM03 終了後に、DPZ でぞくぞくと記事になってた。おかしい、俺はどこで見知っていたんだろうか…。

もっとちゃんとした玩具としては、ビー玉工場がすてきでした。部屋にあったら、ずーーーっと眺めていたい。そしてイベント等のお知らせに使いたい基板。良く見ると、回路のパターンが渋谷の地図になってます。地図でありながら、抵抗やコンデンサやトランジスタを載せるとちゃんと動く、なんて設計が出来たら素敵だ。あとは、素数の計算するけど 10 行でバテる ZX81。健気です。まぁ、ヤラセなんだけど。(^^;;

ビー玉工場 基板地図 健気な ZX81

利用するモノ

我ながら微妙な分類ですが、動かすのを楽しむというよりは、何かのために使うツールという感じで。

へんな眼鏡(ブレインマシン)をかけた人が並んで座ってるというのは、もっとも不気味な風景だった。試してみたけど、激しく点滅する LED とホワイトノイズ(?)で妙な気分になります。が、それをリラックスと呼ぶかどうかは良く分からん。

ブレインマシン

自分でも使ってみたいと思ったのは、空撮ツール各種(CCD カメラを積んだヘリコプターやペットボトルロケットなど)と立体視変換ソフト(ステレオグラムから赤青グラムへ)。文字入力装置は、キャラクタコード表上の文字にカーソルを合わせてトリガーを引き、入力します。…これって日本語タイプライターのノリだよな。(^^;;

空撮ツール 立体視変換ソフト 文字入力装置

盛り上がりテレビは見てるだけだと何だか分からないけど、説明を聞いて感心した。2ch のテレビ番組実況板の書き込みが最も多い局に、テレビのチャンネルを勝手に変えます。I/F は赤外線のリモコン信号なので、フナイのブラウン管テレビでも大丈夫。名付けて集合知ザッピング。キャッチフレーズって大事だ。

2ch 盛り上がりテレビ

模型的なモノ

テオ・ヤンセンに刺激を受けて…というのが、少なくとも二つありました。あのもそもそと動くやつを紙で作ってみた、もしくは作ってみよう、という。

ゼンマイで動くテオ・ヤンセン 紙で作るテオ・ヤンセン

ロボットを展示してるグループもいくつか(でも写真は1枚だけ)。それにしても二足方向ロボットって、いつの間にか普通に作れる物になってるんですねぇ。そして、キワモノだらけのこのイベントではかえって意外感がある、普通っぽい模型も。

ロボット各種 潜水艦モデル

おわりに

その他、オライリーブースでは書籍や組み立てキットのほか、ピンバッジとストラップが入ったがちゃがちゃ(当りつき)やTシャツの販売も。あと LED クロックのワークショップやってた人たちのスタッフTシャツが気になった。オイラ、リー。

オライリーブース がちゃがちゃ オイラ・リー

てなわけで、目についたものだけでもこんなにいっぱい、とにかくよりどりみどりで盛り沢山な2日間でありました。そして、スピードケーブリングの第2回日本選手権も開催されたので出場してきました。予想よりも遥かに難易度が高くて2回戦落ち。ともあれ、秋には MTM04 を開催するそうなので、楽しみに待ちたいと思います。

関係ないけど、会場近辺には多摩モノレールが走ってます。軌道が歩道の真上を走ってるので、モノレールの裏側が見えるのだ。得した気分。

モノレール裏 モノレール裏


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