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クラインの壷

メビウスの輪ってありますよね。帯で出来た輪を一ケ所で切って,一方の端を 180 ℃ひねってからもう片方の端にくっつけたやつ。これは表面をずーっとたどって一周すると裏面に来てしまうと言う具合になっています。これは2次元的な存在である平面に3次元的ひねりを導入する事によって製作が可能になっています。これの次元を1つあげてやったのがクラインの壷です。3次元的な,裏表のある閉曲面を一部切り開いて,4次元的ひねりを導入してくっつけます。これによって,表面をずーっとたどって一周するといつの間にか裏面にたどり着いていると言う怪し気な閉曲面ができます。ただし3次元人にとってはこの「4次元的ひねりを導入」ってとこがなかなか難しくて,閉曲面の一ケ所に穴をあけてやらないといけません(cf. たざきさんによるクラインの壷の作り方のポンチ絵)。この穴を開けないで作った「真に4次元的なクラインの壷」を半円状に整形したものが,ドラえもんの4次元ポケットです(おい)。

で,穴あきの3次元版クラインの壷は市販されています。Acme Klein Bottle というとこです。このサイトは購買欲が全くなくても読んで楽しめるのでお勧め。こんな所があるとなると,どうも買わなければいけないような気がしてきたので買ってしまいました。クラインの壷と言われて(知ってる人なら)パッと思い付く形のモノを一つと,位相幾何学的にはこれ同じでありながら認知心理学的には大いなる断絶を見せつけるモノを一つ。

普通のクラインの壷と変な形のクラインの壷

これがその二つです。右側のはすぐに納得出来ますよね。丸い部分にあいた穴からむにゅ〜っと入っていくと,ぐるっと回って丸い部分の内側にたどりつきます。左側の方はどう見てもビアマグとかジョッキとかに見えると思いますが,クラインの壷です。胴体部分が2重になってるのが分かりますよね。このおかげでビールがぬるくならなくて済むのです。…ではなく,えぇと,このビアマグを左側から見るとこんな風になっています。

ビアマグ形クラインの壷の穴 ね。取っ手は管になっていて,その管は上部ではビアマグ胴体の内側に,下部ではビアマグ胴体の外側につながってるんですね。この上部の穴が,普通のクラインの壷の丸い部分の穴に相当します。胴体外側はこの管を通すために穴があいている(3次元なもんで)ので,注いだビールが次元の裂け目へと失われる事はありません。

ただこのビアマグには重大な問題があるんだよな。ビールを注いだ時に取っ手を通って胴体の壁の中にたまってしまった場合,これをきれいにするのはかなり大変に違いないのだ。


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